2021年4月18日、欧州サッカークラブに衝撃が走りました。
それは欧州スーパーリーグが開催されるという話題が表面化し、実現化のために動き出したからです。
しかしスゴイ早さで頓挫してしまい、そこまでサッカーに詳しくない方々からすれば、『結局あの騒動はなんだったの?』といった状態になっています。
今回はこの欧州スーパーリーグとは何なのか、どうしてこの構想が誕生したのか、直ぐに頓挫した理由は何なのか、これからのサッカー界に影響はあるのかをご紹介いたします。
欧州スーパーリーグ構想って何?
欧州スーパーリーグ構想とは、簡単に説明いたしますと『一部の超有名クラブチームだけのリーグを作ろう』という発想です。
この一部の超有名クラブチームというのは、サッカーにあまり興味がない方でも名前だけは聞いたことがあるようなクラブチームが該当します。
この構想は実は最近いきなり出てきたのではなく、フランスワールドカップが開催された1998年には動き出していたと言われております。
当時最強クラブとして輝いていたACミランやインテルといった競合がいるイタリアが主導で動いており、ミラノに事務所を構えていた国際コンサルティング会社のメディア・パートナーズが、今のスーパーリーグ構想に近い『ヨーロッパフットボールリーグ構想』を作り上げました。
名前は違いますが、発送は今回主題となるスーパーリーグ構想と一緒で、強豪クラブ同士の試合をたくさんするリーグであり、その放映権が狙いのリーグでもあります。
どうしてこんなリーグ構想が出てきたの?
このリーグ構想ができた理由はいくつかあります。
その一つが『テレビ放映権の高騰』です。
サッカーは昔からビジネスと直結する側面があったのですが、テレビ放送を通して世界各国に放映されるようになると、この強豪クラブになればなるほどこの放映権が高騰していきます。
この高騰が加速したのが衛星テレビ放映の導入です。
具体的には1990年代に入ってからのお話で、ここから一部のクラブチーム経営者は『より視聴率が高まる試合ができる環境を整えることができれば、さらにテレビ放映権をアップさせることができる』と考えるようになりました。
実際に数字がとれる試合というのは強豪クラブ同士の試合であり、強いクラブと弱いクラブの試合と比べるとかなりの差が生じていたのです。
二つ目が『主導権の確保』となります。
強豪クラブはある程度自由に動けるようになるため、そしてヨーロッパサッカー連盟(UEFA)に縛られるルールを設けられたくないので、主導権を確保したいと考えていました。
この『主導権の確保』のために、『自分たちが独自に動いてリーグを作ってしまった場合UEFAの収入は激減するぞ』という脅しができる状況を作りたかったのです。
UEFAだけが儲かるような状況にしないため、強豪クラブなりの対抗策がこのスーパーリーグ構想でした。
UEFA側も強豪クラブの機嫌を損ねるのはよろしくないので、両者が納得してWIN-WINの関係になれるように調節する形をずっと取り続けます。
ある意味、UEFAと強豪クラブは20年以上前からズブズブの関係になったということであり、一蓮托生の関係になったと指摘する人もいました。
参加チームは?
今回の欧州スーパーリーグに参加を表明したクラブは以下のとおりです。
【プレミアリーグ】
【ラ・リーガ】
【セリエA】
創設12クラブでその後に3クラブが追加されて、さらにリーグ戦の成績を加味して5クラブ追加して20クラブによるリーグになる予定でした。
しかし、バルセロナとレアル・マドリードとユヴェントス以外の9チームが、4月21日までには脱退を表明し、発表した4月18日から3日も立たずに計画は頓挫してしまいます。
ドイツとフランスのクラブはどこ行ったの?
先ほどの参加クラブの説明を見て、少しサッカーに詳しい方なら直ぐにツッコんだはずです。
『パリとかバイエルンとかないけどどこいったの?』というツッコミです。
フランスにもパリサンジェルマンという強豪クラブがありますし、ドイツにもバイエルンミュンヘンやボルシアドルトムントという強豪クラブがあります。
この3クラブには実は声がけをしていたのですが、どうやら断られたので12クラブでの欧州スーパーリーグ開催宣言がされたようです。
ドイツの場合はドイツサッカーリーグ機構そのものが、この欧州スーパーリーグの参加を拒否したようで、UEFA側もドイツサッカーリーグ機構に感謝の言葉をかけています。
この欧州スーパーリーグななぜ開催に至ったのか、元々この欧州スーパーリーグ構想というのは20年前から存在していましたが、あくまでも強豪クラブが主導権を確保するための思想の一つであり実行することはあり得ないという意見が多かったのです。
しかし2021年4月にいきなり開催が宣言されて、サッカー界は一気に大荒れになりました。
ただの構想だったはずが、実際に開催宣言をしてしまったのはなぜでしょうか。
資金繰りが苦しい強豪クラブがいた
新型コロナウイルスは世界中で猛威を振るっていますが、この猛威による収入源が予想以上にダメージになってしまった強豪クラブが存在します。
その筆頭がバルセロナでしょう。
バルセロナは元々選手獲得のローンなどが非常に貯まってしまい、ものすごい借金(一説には1500億円もあるとのこと)を背負っている状態になっていたのですが、新型コロナウイルスによってさらなる収入源となり財政が非常に危険な状態になってしまいました。
こういった直ぐにでもお金が欲しいという強豪クラブが開催にゴーサインを出したのでしょう。
実際にこの欧州スーパーリーグでは参加する予定のクラブが直ぐにでも大きなお金が手に入る仕組みになっていたので、魅力的に映ってしまったのだと言われております。
参加クラブの収益は長期的なスパンで見ると100億ユーロを超え、短期で見ても創設クラブならば35億ユーロを入手できるというびっくりするぐらいの金額が動いていました。
今のチャンピオンズリーグのやり方に不満がある
UEFAが主導して活動しているチャンピオンズリーグのやり方に不満があったという意見もあります。
UEFAはヨーロッパ的な平等を主張し、欧州サッカー連盟に参加している55の国や地域と繋がっています。
当然チャンピオンズリーグなどの収益も、この55の国や地域に分配するという形になっており、典型的なピラミッド構造となっていたのです(強豪クラブももちろん勝ち上がるためUEFAからの分配金はかなりあるが、弱いクラブでも参加するだけでそれなりの収入があった)。
このピラミッド構造が気に入らないと考えているビッククラブの関係者達の中に、『自分たちが観客を引きつけて視聴者を集めているのに、それを分配する形になるのでは得るものが増えることがほとんどない』という考え方を持つようになったのです。
UEFAやFIFAが気に入らない
強豪クラブが強豪クラブを維持するには大きなリスクを背負っています。
大きな金額を払って選手を獲得して、魅力的なチームを維持するために多方面に手を出して、テレビ映えするためのプロジェクトを次々と成功させないといけません。
しかし、高額の選手を獲得しても活躍するとは限りませんし、怪我によってほとんど活動できなくなってしまうケースすらあります。
多額の資金を用いて獲得した選手が全く活躍することなく、獲得するために使った金額の10分の1程度で中堅どころのチームに売られるというのは、経営陣からすると致命的な問題と言えるでしょう。
特に移籍金や年俸が高騰している現代サッカーでは、こういったミスが発生すると簡単に100億円単位の損失が発生してしまいます。
こんな危険すぎるリスクをクラブ側は背負っていますが、UEFAやFIFAはこういったリスクは一切ありません。
そんなリスクゼロの人達に自分たちが、必死に魅力的に作り上げたクラブの収益をピンハネされ続けたら怒り心頭になるのは当然でしょう。
その結果、より自分たちに魅力的なリーグを作ろうという発想に至ったのです。
これらの意見をまとめると、金銭的にも称号的な意味でもチャンピオンズリーグそのものに魅力がなくなってしまったと感じたビッククラブが、今回のスーパーリーグ開催に賛成したと言えます。
どうしてこんな早さで頓挫した?
この欧州スーパーリーグ創設計画はわずか数日で瓦解することになりました。
しかし、なぜこんな高スピードで瓦解することになってしまったのでしょうか。
推測ではありますが、多くの方々が色んな意見を述べているのでその中でも有力な意見を統括して見ていきましょう。
反応を見てダメなら脱退予定だったから
欧州スーパーリーグ創設計画が出てから直ぐに脱退を表明したのは、イングランドのクラブです。
イングランドからは、アーセナル、チェルシー、リヴァプール、マンチェスター・シティ、マンチェスター・ユナイテッド、トッテナムと6クラブも参戦予定だったのですが、直ぐにみんな脱退してしまいました。
この6チームはイングランドのプレミアリーグに所属しているのですが、このプレミアリーグは世界的に見ても成功しているリーグであり、スポンサーや放映権もチャンピオンズリーグの収入を簡単に超えることができます。
つまり、金銭的な余裕が確実にあるクラブなのです。
そういったクラブであったため、ファンや政府の反対意見があまりにも大きかったら脱退しようという考え方を持っていたとしても不思議ではないと思います。
逆に反対意見が少なく賛成意見が多数だった場合は、この6チームはそのまま残り続けてスーパーリーグ創設計画にも荷担し続けた可能性があります。
金銭的余裕があるから
欧州スーパーリーグ創設計画に参戦する理由の一つに、収益金がチャンピオンズリーグよりも圧倒的に多いというものがありましたが、この資金がそこまで魅力的に映らなかったクラブは簡単に脱退できてしまいます。
先ほど記載したようにプレミアリーグに所属しているクラブは、プレミアリーグだけでの収入もものすごく大きいので脱退しても痛くもかゆくもありません。
仮にこの行動によるUEFAのペナルティーで、来季チャンピオンズリーグに参戦することができなかったとしても、金銭的には痛くないのでしょう。
逆に金銭的に余裕のないバルセロナはいつまでたっても脱退表明が出ないので、何が何でも成功してほしかったという考え方があったのだと思います。
びっくりするぐらい反対声明が大きかったから
この欧州スーパーリーグ創設計画が発表された後のファンの動きは非常に速く、政府の動きも迅速でした。
特にプレミアリーグが顕著で、直ぐに意識調査が開始されスーパーリーグ創設計画が発表された直近の試合で多くのファンが抗議のために集まるという事態になったのです。
イギリス政府はオリヴァー・ドウデン文化相が、『サッカーの真の精神に反している』として批判していましたし、イギリス王室のケンブリッジ公爵ウィリアム王子も『私たちの愛する競技が、ダメージを受けるリスクに直面している』と懸念を表明しました。
こういった動きが予想以上に大きすぎたために撤退したという意見もあります。
最初から撤退する予定で参加していた
面白い意見の一つとしてこの欧州スーパーリーグ創設計画に参戦を表明していたが、最初から脱退する予定だったというモノがあります。
そもそも、このスーパーリーグ構想というのはUEFAやFIFAに対する抗議の意味も込められていました。
しかしUEFAやFIFAが『どうせ口だけで行動しない』と甘く見ていたために、本当に行動できるという事を示したと考えることができるのです。
たとえチャンピオンズリーグ参加資格をしばらく剥奪される可能性があったとしても、このようにはっきりとした形で抗議することができればよかったのかもしれません。
チャンピオンズリーグに出場したいと考えている選手にとっては、迷惑かもしれませんが、こういった考え方も確かにできると思います。
欧州スーパーリーグ計画がこれからサッカー界に与える影響は?
欧州スーパーリーグ創設計画はものすごい速度で頓挫しましたが、サッカー界に確実に大きな影響をもたらすことでしょう。
この影響についても様々な考察がされているので、それらの意見や考え方を統括してまとめていきます。
強豪クラブとUEFAの敵対関係が浮き彫りになった
今回の動きそのものが強豪クラブによるUEFAに対しての抗議行動であったという意見があります。
個人的にもこの意見は納得できるものとなっていますし、ここまで本気で行動するとは思っていなかったUEFAやFIFAは確実に慌てたでしょう。
4月下旬現在では欧州スーパーリーグ創設計画は直ぐに頓挫してしまったため、騒ぎも沈静化しつつありますが、多くの人達が『なぜこのような行動をしたのか?どうしてチャンピオンズリーグから脱退使用としたのか?』を知るキッカケとなり、強豪クラブとUEFAの対立がどうなっているのかを知ることができました。
今回の動きでUEFAがさらに強豪クラブに制裁を加えるという話になった場合、再度今回のスーパーリーグ創設計画を持ち出して対立することになると予想できます。
選手やOBや関係者の声が多く集まる
今回のスーパーリーグ創設のお話は一部の人達のみで進んでいます。
そのため、所属クラブの一部関係者や選手は全く知らされていなかったのです。
実際に参加を表明していたリヴァプールの監督であるユルゲン・クロップ氏は、『我々はこのプロセスに関与していなかったからね。
選手たちも、我々は知らなかった。』とはっきり口にしています。
さすがにこういった行動は、どうなのかという批判の声もかなりあるため、今回の騒動で選手やOBや関係者達の声が多く集まり、彼らの主義主張への注目度も上がるのではないでしょうか。
まとめ
以上、いかがだったでしょうか。
今回は欧州スーパーリーグ創設計画についてのお話をさせていただきました。
欧州スーパーリーグ創設計画はスゴイスピードで頓挫しましたが、その影響はすさまじいモノであり強豪クラブとUEFAの敵対的関係は浮き彫りとなったでしょう。
仮にチャンピオンズリーグ参戦がしばらくできなかった場合、一部選手がチームを離れる可能性すらありますので、今年のオフシーズンの選手の動きにも注目です。
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