正月にはお餅やお雑煮を食べるのが当たり前ですが、この当たり前になった理由や由来をはっきりと説明できる人は少ないでしょう。
また、お餅は地域による独特な進化を遂げているところも多いので、種類もかなり豊富であり地域性が出やすい食材でもあります。
今回は当たり前すぎて違和感がなく受け入れられてきたお餅についての疑問を解消いたします。
正月にお餅を食べる理由は?
昔の人は今の人たちよりも圧倒的に『縁起の良さ』や『儀式』を大事にしており、お正月には1年の健康祈願や豊作祈願などの願掛けをするために、いろんな種類の『縁起の良い食べ物』を集めております。
つまり、お餅を正月に食べるというのも、何らかの縁起の良い部分があるということの証左でもあります。
意味や由来については後述いたしますが、現代においてお正月にお餅を食べるのは昔あった儀礼的なものが今でも残っているとお考え下さい。
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正月のお餅の意味や由来!
ちょっとした歴史を調べてみると、お正月の三が日に硬い食べ物を食べることを、『歯固めの儀』と呼んでいたという情報があります。
この『歯固めの儀』とは、もともと『歯を丈夫にすることで長生きすることができる』という考え方からきているので、長生きをしたいという風習からお餅を食べているという説があるのです。
それ以外にも、前年に実ったお米で作られるお餅は、豊穣の神様に対する祝いの品としては、最適であるという考え方があったので、作られたという説もあります。
お正月に飾る鏡餅は、三種の神器の一つである八咫鏡という意味もありますし、人間の魂や心臓を見立てたものでもあるのです。
そのように見立てられた鏡餅には、年神様が宿るとされていたのですが、そもそもこの年神様は1年に1回訪れる来訪神ではなく、豊穣の神様だったのでまさにお餅との相性は抜群だったのでしょう。
また、白い清らかなお餅を食べることで、厄を祓うことができるとか、神様の恵みを得ることができるという説もあります。
そして民俗学的に存在する、『ハレの日(非日常)』と『ケの日(日常)』という考え方から、お正月はハレの日に該当するので、おめでたいお餅を食べることに意味があったともいえるでしょう。
普段食べないものを食べることで、気持ちを切り替えることができるというメリットもありました。
このように、神様へのお供えという概念からスタートしたのですが、歯固めの儀といった内容も古くから伝わっており、その風習が薄れた今でもお正月にお餅を食べるという考え方そのものは消えなかったのでしょう。
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正月のお雑煮にお餅入れて食べるのはなぜ?
これも儀礼的なものと、お正月に縁起が良いものを食べることが、大切という考え方からきています。
もともとこのお雑煮とは、『お餅を入れた汁物』であり、室町時代には武家社会を中心にすでに広まっていた食べ物のようです。
とにかく縁起の良い食べ物だったので、お正月を問わず祝いの膳として、重宝されていたといわれております。
もともと、このお雑煮は餅や野菜や肉といったいろんな具材を雑多にして煮ることから、『煮雑』と呼ばれていたようで、そこから『雑煮』という言葉に変化したようです。
お雑煮とはちょっと話がそれますが、室町時代よりはるか昔から祖霊信仰や民間信仰が盛んで、特に農耕民族である日本では、豊穣の神様が祀られることが多かったのです。
年神様も元々は、大歳神という日本神話に出てくる豊穣の神様と同一視されており、豊作をもたらしてくれる神様の1柱でした。
この豊穣の神様に対するお供えとして鏡餅が使われており、年神様の依り代として使われた鏡餅を食べることで、その力にあやかることができると考えられていたのです。
豊穣の神様からお正月のタイミングで訪れる来訪神に形が変わっても、そのやり方は変わらず、お正月には鏡餅を用意して食べるという考え方が根付きました。
ただし、お供えした鏡餅はお供えする期間が10日以上と、かなり長くなるのでめちゃくちゃ固くなります。
硬い鏡餅を少しでも柔らかくする方法の一つが、お雑煮だったのでしょう。
この硬さから歯固めの儀に使われたのも納得です。
そして昔はお正月にお餅だけではなく、野菜などもお供えしていたようで、お供えしたものを食べることで、神様のパワーをおすそ分けしてもらえるという考え方が根付いたといわれております。
このような風習からお雑煮という概念がうまれ、お正月にはお雑煮を食べるのが、当たり前という認識になりました。
お雑煮はいつ食べるの?食べるタイミングは?
昔は儀礼的な側面もあったので、神様へのお供えが終わったタイミング、つまり松の内が終わったタイミングで食べることが多かったのですが、今では鏡餅とお雑煮は分けて考えられているのでこの考え方とはことなります。
現代においては、お雑煮を食べるタイミングは、お正月の三が日となっていますが、多くの方は1月1日の午前中、つまり朝食でお雑煮を食べるようです。
それ以外の人でもお昼ごろには食べているので、1月1日には高確率でお雑煮が食されています。
本来ならお雑煮の中に入っている餅の数を、毎日1個増やすと縁起が良い、つまり毎日お雑煮を食べるのが良いとされているのですが、はっきり言って飽きてしまう人も多いので、毎日は食べずに1月1日だけ食べるという人も増えています。
お正月のお餅の種類を教えて!
お正月に食べるお餅やお雑煮の種類は、地域ごとに異なります。
お雑煮の場合、新潟ならば鮭やイクラのお雑煮になりますし、広島ならば牡蠣が入ったお雑煮になり、香川県だとあんこが入ったお雑煮も登場します。
それ以外にもハゼが入ったお雑煮や、くじら汁にお餅を入れたくじら雑煮も存在します。
お正月に食べるお餅と限定した場合、長方形型のお餅である角餅、丸い形の丸餅、味噌餡とゴボウを包んだ花びら餅、沖縄のちょっと変わったお餅であるナントゥーなどが該当します。
1年に1回お餅を食べるチャンスでもあるので、丸餅や角餅をきなこ餅や砂糖醤油餅や御汁粉に使う方もいるようです。
あんこ餅や揚げ出し餅や力うどんに使う方もいます。
いろんな食べ方がありますが、最も多いのは今でもお雑煮のようです。
お正月に関するそれぞれのお餅の意味を教えて!
お正月に食べるお餅というのはもともと、鏡餅で使われるような心臓・八咫鏡・人間の魂という意味があったのですが、時代の移り変わりによってそのような儀礼的な意味は薄れて、使い勝手の良さなども混じるようになりました。
現代主流となっている丸餅と角餅にもちょっとした理由があります。
関西地方や寒冷地を中心に、今でも中心となっている丸餅は、『丸く収める』という言葉にあるように、『円満』を意味する丸餅を食べるようになったとのことです。
関東地方といった東日本を中心に広まっている角餅は、あまりにも餅の消費量が多くなりすぎて、丸くすると大量に作るのは不向きになってしまい、まとめて作ることが簡単な四角い形をしたお餅が主流になったといわれております。
つまり、角餅には儀礼的な意味よりも大量生産がしやすいという現代風の考え方のもとに、誕生したものと言えるのです。
まとめ
以上、いかがだったでしょうか。
今回はお正月のお餅についてのお話をさせていただきました。
昔は豊穣の神様に対するお供えだったのですが、今ではそのような意味は薄れています。
それでもお餅という文化は強く根付いていますので、お餅そのものを楽しむことはまだまだできるでしょう。
むしろ、バリエーションが豊富になっていますので、地域ごとの違いを楽しむことも可能となっております。
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