ドラフトや日本シリーズなどの華やかな舞台がある一方で、不安視されながらも2022年には実行される可能性が高いものが野球界には存在します。
それが『現役ドラフト』です。
ここではこの現役ドラフトについて詳しく解説しつつ、2021年12月現在どのような状況になっているのか、アメリカではどのような制度として実行されているのか、そもそも本当に成功するのかも考察していきましょう。
現役ドラフトの意味とは?
現役ドラフトとは、『出場機会に恵まれない選手の移籍を活性化させる制度』です。
具体的なルールについては決まっていませんが、おそらく『1軍での出場機会が一定数以下のチームに所属して、数年以上経過している選手を決まった時期に獲得できるように、ドラフトができるようになる制度』となるでしょう。
ただし、細かいルールについては煮詰まっておらず、どのようになるのかが色々と話題になっているのが実状です。
2021年12月現在はどうなっている?
現役ドラフトに関する計画は、2019年頃から活発化して2020年には導入されると言われていましたが、新型コロナウイルス感染症の影響で延期となっているのが実状です。
最新情報として、こちらの『選手会が「現役ドラフト」修正案提示 1月頃まで、各球団5人以上を対象 – プロ野球 : 日刊スポーツ』には以下のようなルールが適用されると言われているようです。
参考資料
ただし、出場試合数や年齢、所属期間に関する案は出ていないので、まだまだわからないところだらけなのです。
また、選手会側の以前の主張も記載されていますが、以下の内容になっています。
つまり、内容や時期などは昔と比べると変化してきているということです。
なぜ導入しようという案になった?
現役ドラフトと似たような内容は、すでにアメリカや韓国のプロ野球界では実行されております。
これによって、『出場機会に恵まれない選手の移籍をして、活躍の場を得られる』という好循環を生み出した事例が発生しています。
要するに選手側にとって、チームの飼い殺しを防ぎ、少しでも活躍できる場所を増やしたいというもくろみがあります。
参考にしているのは、メジャーリーグでも導入されている『ルール・ファイブ・ドラフト』です。
このルール・ファイブ・ドラフトは古くから実行されており、1954年には野球殿堂入りを果たしているロベルト・クレメンテもこれにより移籍しております。
日本でも導入に関する噂はありましたが、正式に動き出して選手会から実際に口に出たのは2018年7月からと言われております。
メジャーは導入されていたのに、なぜ日本では導入されなかった?
野球のルールに関して、NPBはメジャーリーグを追従する傾向が非常に強いので、この状態を知っている方なら『ルール・ファイブ・ドラフトもマネしたんじゃないの?』と思うことでしょう。
結論を記載すると、似たようなことを過去にやっていたのです。
実際に1970年から1972年には、似たような『選抜会議』が行われていました。
しかし、3年で中止となり歴史から消えます。
さらに、1990年3月30日にまた『セレクション会議』という名前で、似たような現役ドラフトが行われましたが、これも浸透することなく消えました。
要するに、今までもアメリカのマネをして導入しようとしてきたが、失敗していたということです。
現役ドラフトは何が問題視されているの?
この現役ドラフトははっきり言って問題とされる部分が多々あるために、このまま導入するのは止めた方がいいという意見が多数あります。
わかりやすいのは、こちらの『プロ野球、現役ドラフト議論に里崎氏が警鐘「早めの戦力外選手の見本市になってしまう」実現への道のりは?(ABEMA TIMES) – Yahoo!ニュース』という記事でしょう。
この記事で里崎智也氏が指摘しているように、8月に実行したのなら戦力外選手の『見本市』になると指摘しています。
また、リストアップする人数が少なすぎるので、1チーム20人くらいの選手がリストアップされる状況にしなければ活性化には繋がらないと指摘しているのです。
ただし、こういったリストを作るのも非常に難しいため、簡単には決まらないとも指摘しているのです。
このような指摘があったからなのか、選手会側の意見も変わり、8月ではなく1月に実施期間を変更し、戦力外が出た後なので人数が減って5人以上と人数の調整もされるとされています。
現役ドラフトにおける筆者の考察
現役ドラフトにおける個人的な考察をここでは述べていきたいと思います。
リスト化の制度について相当煮詰めないと、メジャーリーグのような機能的なルール・ファイブ・ドラフトと同じようにはならないでしょう。
ルール・ファイブ・ドラフトについて
まずルール・ファイブ・ドラフトには、リスト化するための重要なルールは以下のとおりです。
他にもルールはありますがその中でも重要なルールがこれです。
要するに、プロ在籍シーズンが一定年数以上の40人枠から漏れてしまった選手は、ルール・ファイブ・ドラフトで獲得できるということです。
DFAについて
そして、このルール・ファイブ・ドラフトが活発になっている最大の理由が、メジャーリーグには『Designated for assignment』の略である『DFA』という制度が効いてくるのです。
これは簡単に説明すると、メジャー契約となる40人枠から外されることで、2021年に話題になった山口俊投手もDFAとなったのです。
マイナーオプション契約がある選手の場合は、アクティブロスターである26人枠から漏れてもマイナーでプレーさせることができるのですが、これができない選手はDFAとして40人枠からも外れます。
このDFAの対象となるとどうなるのか、結論は『7日間以内に他球団とトレードできる状態になるか、保有権放棄宣言があれば7日以内に獲得したい球団が獲得できる状態になる』となります。
さらに、『7日間を経過してしまったのなら球団側は解雇できる』ともあります。
例外として、ある条件を満たすことができた選手は、マイナー降格を拒否してFAすることもできるのです。
ルール・ファイブ・ドラフトとDFAがかみ合う現役ドラフトで解決する?
この2つのルールがあることで、『マイナー契約のまま放置するとルール・ファイブ・ドラフトの対象となり、出て行かれる可能性がある』という状態になります。
『ルール・ファイブ・ドラフトの対象となる選手を40人枠に入れると、誰かがDFAになり出て行かれる可能性がある』という状態になります。
要するに、良い選手を大量に抱え込むことができない状態になるということです。
このように、リスト化のルールと飼い殺しを防ぐための様々なルールが、うまくセットになっているため、ルール・ファイブ・ドラフトはとても機能的なものとなってきます。
筆者はこの2つのようなルールを日本の現役ドラフトでは整えることができないと感じているので、そこまで機能するものではないと思っているのです。
まとめ
以上、いかがだったでしょうか。
今回はプロ野球において導入されそうな現役ドラフトについてお話ししました。
2021年10月の記事で導入に向けて本格的に動いているという内容をいくつか見受けられました。
その結果、2022年度から試験的にでも導入される可能性は高いと思います。
しかし、アメリカのルール・ファイブ・ドラフトのように大きく機能するものとはならないでしょう。
それでも試合に出場できる選手が増えることは喜ばしいことだとは思います。
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