野球ファンなら、必ずと言ってもいいほど、誰もが1球1球ピッチャーが投げたスピードを確認してしまいます。
今回はあらゆる動画や資料に基づいて、なぜ球速表示以上に速く感じるストレートを投げる投手がいるのかなどを検証いたします。
また2021年現在、メジャーで二刀流として大活躍中のエンゼルス大谷選手の剛速球の記録は、歴代何位なのか調べてみましょう。
歴代記録を確認しながら、スピードガンの歴史にも注目し、スピードガンで球速を測定するタイミングはいったいいつなのかといった疑問にもお答えいたします。
歴代記録順位
こちらはいくつかのランキングサイトがあったので、どれを参照するか迷いましたが参照するのは『MLB・日本プロ野球の歴代球速ランキング(歴代最速投手ランキング) | MLB雑記(http://mlb-info.com/fastestpitchrecord/)』と『第94回 【ストレート】メジャー(MLB)の平均球速・最高球速ランキング(2020年) – データで野球を楽しもう – Page 2』の2つのサイトです。
参考資料
こちらで球速における2020年度の記録と歴代記録を見ていきたいと思います。
まず、歴代球速ランキングを見ていきましょう。
※大谷翔平選手の記録は165.0km/h
この中でも信憑性のない数字はありますが、チャップマンの記録は完全な公式記録であり、抜かれることがないびっくりする数字となっています。
160km/h代の変化球も投げていたので、球速に関しての記録として抜かれることが当分無い金字塔だと思います。
2020年度だとデグロムの164.5km/hが最速ですがそれでも十分早いです。
日本球界の歴代順位は?
日本での球速記録ランキングも合わせてみていきましょう。
参考にするサイトは『【NPB】プロ野球(NPB)歴代最高球速ランキング まとめ一覧 | まったりどうでしょう』です。
※大谷翔平の記録は2016年10月
チアゴ・ビエイラが166km/hを計測したので、実は大谷翔平の記録は抜かれていたのです。
また、日本では球速表示が1km/h単位で測定されるので、大きな差が出にくいという意見もあります。
さらに見てもらいたいのがこちらの動画です。
こちらの動画は『剛腕すぎた剛腕。世界最速が出てしまった瞬間』というタイトルでパリーグTVの動画となります。
2013年にサファテが172km/hを投げてしまった動画ですが、これは誤計測として扱われたので公式記録になっていないのです。
スピードガンの歴史
球速を測定するための器具として非常に有名なスピードガンですが、このスピードガンは野球と深い関わりがあります。
日本で伝わったのは1976年と言われており、最初はスカウト活動で用いることからスタートしたようです。
アメリカでは軍事レーダー技術から、1972年には可搬式のポリスレーダーとしたのが始まりと言われており、そこからメジャーリーグのスピードガンの歴史が始まったと考えられています。
そこから一気に広まって全球団のスカウトが活用するようになりました。
日本のプロ野球で本格的に球速表示されるようになったのは、プロ野球界へ本格的に導入がスタートした1979年で、1980年にはナゴヤ球場で電光掲示板に表示されるようになったのです。
またメジャーリーグの公式戦で球速表示がされるようになったのは、1974年のことなので、かなり早い段階での導入であることがわかってきます。
ちなみに、高校野球では広告の関係もあって、甲子園での球速表示は2004年からとなっていました。
測定する位置で速度は異なる?(真後ろ?斜め後ろ?真横?)
動く物体は初速と終速で大きな違いが出るため、測り方で結果が大きく異なります。
プロ野球で表示されるあの速度は、いったいどのタイミングでどのように計測しているのでしょうか。
参考にしたサイトはこちらの『スピードガンを使ったボールやスイングの測り方!イラストで分かりやすく解説 | 計測機器販売なら|測定キューブ』です。
このページを見ると、ベストポジションは投手と捕手の真後ろとなっています。
初速か終速かについては、『初速、終速といった捕らえ方はしておりません』という回答だったので、あまり参考になりません。
初速と終速についての考え方は、こちらの『スピードガンの仕組み | 関西エスアンドエー』を参考にしてください。
ポイントとなるのが、カメラでの連写写真に近い形であると言うことです。
連続撮影したときに連続で数値を観測しており、その中での最高速度を表示するという仕組みなのです。
つまり、初速に近い段階での測定結果を出していると言えます。
野球用、テニス用、ソフトボール用全て同じ機種?
スピードガンの仕組みは、基本的に電磁波を用いたドップラー効果を利用して速さを測定するという仕組みです。
このスピードガンには野球の球速計測のように離れた場所から操作して測定するタイプと、投げるボールそのものが測定機器になっているタイプが存在します。
どちらも野球用で存在していますが、に離れた場所から操作して測定するタイプなら野球以外にも使うことができるでしょう。
実際にこちらの『スピードガンを使ったボールやスイングの測り方!イラストで分かりやすく解説 | 計測機器販売なら|測定キューブ』で紹介しているスピードガンでは、野球・テニス・サッカー・バレーボールなど様々なスポーツで活用できるとか、車やバイクなどの道路でも使えるという記載があります。
投手の手元から離れた瞬間の初速を計測?
スピードガンにもいくつか種類がありますが、優れたスピードガンは連続撮影したときに連続で数値を観測するという仕組みになります。
なので、初速や終速のみを測定しているのではないのです。
結果として最高速度である初速がピックアップして紹介されているだけで、どのような球速になっているのかデータで確認することができるようになっています。
スピード表示以上に速く見える投手は?
球速の話題になったときに必ず出てくるのが、『スピード以上に早く感じた』という言葉です。
実際にバッターとして対戦している選手の感性で捉えると、『球速よりも早く感じる投球』になり体感速度が速い球となります。
この言葉を科学的に表すのは難しいのですが、強いて言うなら『腕の振りや投球フォームがゆったりしていて遅いボールが来るように見えるけど、実は球がそこそこ速い』というケースが当てはまるでしょう。
もっとかみ砕いて説明すると『見た目と球速にギャップがある投手』が球が速いと感じることが多いのです。
他にも『リリースポイントが前になっていたり腕の出所がわかりにくいためにバッター側の振り出しが遅くなりいやすい』といったケースでも体感速度で速く感じると思います。
後は『速球が活かせるような緩い変化球を効果的に使うことができる投手』も体感速度が非常に速くなりがちですので、スピード以上に速く感じたといった表現を頻繁にされるようになります。
具体的には、ホークスの和田毅投手が当てはまるでしょう。
他にもこういった話題になると、阪神タイガースの岩崎優投手や元巨人の上原投手、千葉ロッテマリーンズの成瀬投手が紹介されます。
他にも杉内投手や金子投手や江川投手、髙橋朋己投手や星野伸之投手などの名前も挙がってきます。
ストレートの初速と終速の差が少ないと球速以上に速く見える?
ここまでの話を色々と統括してみると、『初速と終速の違いが少ないストレートこそが最も速く見えるストレートなのではないのか?』といった疑問を覚えると思います。
結論を記載すると、『一番速く見えるストレートと一番速く到達するストレートは違う』となります。
これらを調べるために様々なデータやサイトを覗いてみましたが、個人的に最も参考になったのが『「初速」と「終速」の差が小さければ良いストレートなのか? | Baseball LAB[ベースボールラボ]プロ野球×データ』です。
上原投手や藤川投手のデータを見る
ここでは様々な球種の初速と終速を出しているのですが、驚くべき結果も出しています。
あのストレートで多くの三振を奪っている上原投手や藤川投手は、プロ野球選手の平均的なストレートの初速と終速と比べると大きかったのです。
野球が好きな一ファンとしては、某野球ゲームの『ノビ◎』といった特殊能力は『初速と終速が少ないこと』と勝手に思っていたので、この数字を見て全く違うということが判明しました。
むしろ初速と終速が少ないのは、カーブやチェンジアップといった遅いタイプの変化球になっていました。
ここでポイントとなるのが『初速と終速が通常の投手よりも差があるのに何であんなに三振の山を築いたの?』ということです。
先ほど上原投手や藤川投手は、プロ野球選手の平均的なストレートの初速と終速と比べると大きかったと記載しましたが、これも顕著な差ではなく比を見ても1%程度の違いとなっているので、この差が大きな影響をもたらしているとは思いません。
上原投手や藤川投手のストレートは何が違うのか
なぜあそこまで三振が取れるのか、結論を記載すると『ストレートの質がいいとされている上原投手や藤川投手は変化量がとても多いストレートを投げているから』となります。
『ストレートなのに変化球!??!?』と驚いてしまうと思いますが、基本的にストレートは横に変化する投げ方をする人もいれば、縦回転をかけることで重力の影響を減らして放物線を描くような軌道から矢のような真っ直ぐに変化するのです。
これはこちらの『ストレートは変化球だった!?【前編】 ~「変化量」をPITCHf/xで検証~ | Baseball LAB[ベースボールラボ]プロ野球×データ』を見てもらいたいのですが、質の高いストレートは本来ならば重力のみの影響を受けて到達する地点よりもかなり上に着弾します。
より上に着弾するストレートを投げられる人ほど、打者から見ると『ホップしているストレートを投げる』という表現をします。
実際にストレートが浮かび上がっているのではなく、多くの投手が投げるストレートよりも落ち幅が少ない球となるのです。
ストレートの初速と終速の差が大きいとどうなるの?
ストレートの初速と終速が大きいとそれだけ変化量が増えやすくなります。
単純に質の低いストレートだから差が大きいという意見もありますが、超一流の投手でも初速と終速の差が大きかったのでこの結果は重く受け止めるべきです。
実際にストレートの回転数が上原投手や藤川投手以上の投手もいますが、それでも打たれる人もいるのです。
その場合は持っている変化球がどれだけあるのかや、そもそものコントロールはどうなっているのか、リリースポイントや投球フォームなどはどうなっているのかなど別の問題点があると思います。
また、参考にしているサイトでは、このストレートにおける変化量を『伸び』と表現しており、初速と終速が大きい投手ほど伸びがある球となっています。
野球観戦をしている人なら確実に見たことがあると思いますが、高めのストレートを投げたときに、打者のバットがボールの下を振っている時は確実に伸びのあるストレートが来ているときなのです。
初速と終速の差が小さい球種って何なの?
質の高いストレートは、むしろ初速と終速の差があって、よく伸びるストレートであることがわかりました。
今度は逆に初速と終速の差が小さい球種は、何なのかを見ていきましょう。
それは重力に逆らわない球です。
具体的には、進行方向に対して渦を巻く回転と表現されているカットボールやスライダーでしょう。
スライダーも、横に曲げるタイプではなく縦に曲げるタイプです。
他にも重力に逆らわないで落ちる球である、スプリットも初速と終速が出にくくなっています。
いわゆる空気抵抗によって、球が変化していないと初速と終速が一緒になるので、重力がたまに関与しやすくなります。
結果として綺麗な落ちる球になりやすいということです。
実際に田中将大投手は、スライダーとスプリットを投げるので、そのデータを見てみましょう。
それがこちらの『ストレートは変化球だった!?【前編】 ~「変化量」をPITCHf/xで検証~ | Baseball LAB[ベースボールラボ]プロ野球×データ』にあります。
このデータを見るとスライダーとスプリットが見事に縦方向の変化量が少ないことがわかります。
対してストレートは縦方向と横方向に大きく変化しているのです。
スピードが遅いのにプロで成功した投手は?
そこまで球速が速くないけど活躍したまたは今でもしている投手はかなりいます。
具体的には阪神の秋山拓巳投手、ソフトバンクの嘉弥真新也投手や和田毅投手、ヤクルトの石川雅規投手、元オリックスの星野伸之投手などが当てはまります。
球速の遅さでは、元千葉ロッテマリーンズの渡辺俊介投手も当てはまりますが、あれはアンダースローという球速が出にくい投げ方なので例外だと思っています。
以下は通算成績です
星野伸之:オリックス84年~99年-阪神00年~02年 176勝140負 通算防御率3.64 2041奪三振
石川雅規:ヤクルト02年~現役 177勝174敗 通算防御率3.84 1696奪三振
嘉弥真新也:ソフトバンク12年~現役 13勝7敗98H1S 通算防御率3.23 272奪三振
和田毅:ソフトバンク03年~現役 143勝77敗 通算防御率3.19 1723奪三振
秋山拓巳:タイガース10年~現役 48勝39敗 通算防御率3.56 506奪三振
まとめ
以上、いかがだったでしょうか。
今回はスピードガンについて解説しつつ、歴代球速や初速や終速の話をさせていただきました。
個人的にも気になる話題だったので、徹底的に調べて記事にしました。
その結果、伸びのあるストレートは、初速と終速の差が少ないストレートではないことが一番の衝撃です。
伸び◎とは初速と終速の差が少ないストレートと思っていたので、意外と思われた方も多かったと思います。
これで野球の見方がまた一つ変わります。
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